【ベイズ統計】モンティ・ホール問題とベイズの定理

モンティ・ホール問題とは


モンティ・ホール問題は、直感に反して難解に思える確率論の問題として広く知られています。この問題は、アメリカのテレビ番組「Let’s Make a Deal」に由来し、司会者モンティ・ホールが登場することからその名前がついています。数学的な要素が含まれるこの問題は、一見単純に見える選択が実は確率に大きく影響することを示しています。

問題の内容

モンティ・ホール問題の基本的なシナリオは次のとおりです。

  1. 目の前に3つの扉があります。1つの扉の裏には車(当たり)があり、残りの2つの扉の裏にはヤギ(ハズレ)がいます。
  2. あなたはどの扉を開けるか1つ選びます。例えば、扉1を選んだとします。
  3. 司会者であるモンティ・ホールは、残りの2つの扉のうち必ずヤギがいる1つを開けて見せます。例えば、扉2が開けられヤギがいることが確認されます。
  4. 司会者は、あなたに選択を変えるかどうか尋ねます。つまり、最初に選んだ扉(扉1)のままにするか、それとももう一方の扉(扉3)に変更するかという選択を迫られます。

ここでの重要な問いは、「選択を変える方が有利なのか?」ということです。

問題の正解

正解は「選択を変えた方が当たる可能性が高い」です。
直感的には、扉を変えるかどうかは「どちらでも同じ」だと感じるかもしれません。簡単にこの問題を数学的に整理すると、次のようになります。

  • 最初に選んだ扉1に車がある確率は1/3です。この時点で、扉1,2,3それぞれに車がある確率は1/3です。つまり、「扉2か3に車がある確率」は2/3ということになります。
  • しかし司会者がヤギがいる扉2を開けたことで、扉2に車がある確率は0になりました。そうすると、司会者が扉を開ける前の「扉2か3に車がある確率」である2/3が、全部扉3に移ります。

つまり、選択を変えた場合の方が有利であることがわかります。

ベイズの定理で解いてみる


ここから本題です。モンティ・ホール問題をさらに深く理解するために、ベイズの定理を活用することができます。ベイズの定理は、ある事象に関する新しい情報が与えられたときに、その事象が起こる確率をどのように更新するかを説明する定理です。これをモンティ・ホール問題に適用することで、選択を変えるべき理由を確率論的に示すことが可能になります。

ベイズの定理のおさらい

ベイズの定理は、ある事象が起きた後にその原因がどれだけあり得るかを計算する方法です。

ベイズの定理の基本形は次の通りです:

$\begin{align*}P(A|B) = \frac{P(B|A)P(A)}{P(B)}\end{align*}$

ここで、

  • $\begin{align*}P(A|B)\end{align*}$ は、結果 $B$ が観測されたときに、その原因 $A$ が発生した確率(事後確率)
  • $\begin{align*}P(B|A)\end{align*}$ は、原因 $A$ があるときに、その結果 $B$ が起こる確率(尤度)
  • $\begin{align*}P(A)\end{align*}$ は、原因 $A$ が起こる確率(事前確率)
  • $\begin{align*}P(B)\end{align*}$ は、すべての可能な原因が考慮された結果 $B$ が起こる全体の確率(周辺確率)

モンティ・ホール問題におけるベイズの定理の適用

実際にモンティ・ホール問題をベイズの定理で計算してみましょう。項目「問題の内容」で使用したシナリオに沿って解説します。

  1. 事象の定義
    • $A_i (i=1, 2, 3)$:車が扉 $i$ にある事象
    • $S_1$:あなたが最初に扉1を選ぶ事象
    • $B_2$:司会者が扉2を開ける事象

  2. 求めたい確率
    • 扉1に車がある確率:$P(A_1|B_2, S_1)$ 
    • 扉3に車がある確率:$P(A_3|B_2, S_1)$ 

  3. 各確率の計算
    • 事前確率 $P(A_i)$
      すべての扉に車がある確率は均等なので、
      $\begin{align*}P(A_1)=P(A_2)=P(A_3)=\frac{1}{3}\end{align*}$

    • 尤度 $P(B_2|A_i, S_1)$
      • 扉1に車がある場合
        司会者は扉2か3をランダムに開けます。
        $\begin{align*}P(B_2|A_1, S_1) = \frac{1}{2}\end{align*}$
      • 扉2に車がある場合
        司会者は扉3を必ず開けます。
        $\begin{align*}P(B_2|A_2, S_1) = 0\end{align*}$
      • 扉3に車がある場合
        司会者は扉2を必ず開けます。
        $\begin{align*}P(B_2|A_3, S_1) = 1\end{align*}$

    • 周辺確率 $P(B_2|S_1)$
      \begin{align*}
      P(B_2|S_1) &= P(B_2|A_1, S_1)P(A_1) + P(B_2|A_2, S_1)P(A_2) + P(B_2|A_3, S_1)P(A_3) \\
      &= \left( \frac{1}{2} \times \frac{1}{3} \right) + \left( 0 \times \frac{1}{3} \right) + \left( 1 \times \frac{1}{3} \right) \\
      &= \frac{1}{6} + 0 + \frac{1}{3} \\
      &= \frac{1}{2}
      \end{align*}

  4. ベイズの定理を適用
    • 扉1に車がある確率 $P(A_1|B_2, S_1)$ を計算
      \begin{align*}
      P(A_1|S_1, B_2) &= \frac{P(B_2|A_1, S_1)P(A_1)}{P(B_2|S_1)} \\
      &= \frac{\frac{1}{2}\times \frac{1}{3}}{\frac{1}{2}} \\
      &= \frac{1}{3}
      \end{align*}

    • 扉3に車がある確率 $P(A_3|B_2, S_1)$ を計算
      \begin{align*}
      P(A_3|S_1, B_2) &= \frac{P(B_2|A_3, S_1)P(A_3)}{P(B_2|S_1)} \\
      &= \frac{1 \times \frac{1}{3}}{\frac{1}{2}} \\
      &= \frac{2}{3}
      \end{align*}

以上の結果から、あなたが最初に扉1を選び司会者が扉2を開けたとき、扉1に車がある確率よりも扉3に車がある確率の方が高くなりました。つまり、選択を変えた場合の方が有利であることがわかります。

まとめ


モンティ・ホール問題を、ベイズの定理を用いて解説しました。ベイズの定理を用いることで、論理的かつ数学的にこのパラドックスを解くことができます。確率論や統計学の重要性を理解する上で、非常に有用な例と言えるでしょう。

タイトルとURLをコピーしました